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旅行
信楽・甲賀日帰りモデルコース|約400万年前の湖が置いた地層
公開: 2026-10-24 | #信楽 #甲賀 #日帰り #観光 #関西
甲賀市は滋賀県の南東端にあります。東西約43.8km・南北約26.8km、面積481.62km²で、滋賀県土の約12%を占めます。 大阪からも名古屋からも100km圏内で、市域の東部には標高1,000mを超える鈴鹿山脈が連なります(甲賀市公式)。
行き方はJR草津駅から1時間ほどです。琵琶湖線で草津、草津線で貴生川、貴生川で信楽高原鐵道に乗り換えます。 東京からならJR京都駅で琵琶湖線に移り、草津から草津線に入る経路になります。
同じ関西の焼物の町とは、見える範囲が違います。備前や丹波は窯の町として完結していますが、信楽の場合は焼物の外側まで同じ説明が続きます。
約400万年前の湖が置いていった一枚の地層が、この土地の器と忍者と茶を、まとめて説明します。
行く前に決まってしまうこと
- 甲賀流忍術屋敷は水曜日と第4木曜日、年末年始、そして冬期が休館です。水曜に甲南へ行くと、屋敷の中には入れません
- 滋賀県立陶芸の森は月曜休園(月曜が祝日ならその翌日)と年末年始です。 加えて陶芸館(陶芸美術館)だけは展示替えの期間と冬季が休館なので、美術館を見る前提なら日を選びます
- 信楽伝統産業会館は木曜休館です。ここが観光協会のインフォメーションなので、情報を現地で集める組み方なら木曜を外します
- 信楽高原鐵道は貴生川と信楽を結ぶ1本道です。公式時刻表ではおおむね毎時1本で、70分前後あく時間帯があります。帰りの便を先に決めてください
- 信楽駅からMIHO MUSEUMへ向かう路線バスは、令和6年(2024年)3月末で廃止されました。 日帰りで美術館まで足を伸ばすなら車か、JR石山駅発の帝産バス(美術館の開館日のみ運行)だけです
- 畑のしだれ桜は樹齢400年のエドヒガンで、観光協会が「ゆく春を惜しむかのように咲き誇る」と書く遅咲きです。咲くのは春の数日です
- 鶏鳴八滝へ向かう道は大変細く、離合が困難です。一帯では火の使用が禁止され、最大の鶏鳴の滝より山手は未整備で登れません
- 祭は日が決まっています。しがらき火まつりは7月の第4土曜、信楽陶器まつりは10月中旬、田村神社の厄除大祭は2月17〜19日、万灯祭は7月25〜27日です
- 甲賀市観光まちづくり協会の公式サイトは、サーバーメンテナンスのため公開を一時休止中です(2026年10月時点)。問い合わせは電話のみになります
休館日と会期は変わります。行く前に各施設の公式で確かめてください。
1日の流れ
- 09:10
貴生川駅に着く移動
JR草津線と信楽高原鐵道の接続点です。草津駅から信楽まで1時間ほどの位置にあります。
- 09:50
甲南駅から忍術屋敷へ移動
草津線で1駅です。甲南駅から約2km、徒歩約20分・タクシー約5分。新名神の甲南ICからは約3分です。
- 10:20
甲賀流忍術屋敷を見る
甲賀望月氏本家の旧邸で、元禄年間(1688〜1704年)の建物です。落とし穴の深さはおよそ3mあります。
- 12:10
貴生川から信楽高原鐵道に乗る移動
貴生川〜信楽は14.7km・6駅で所要約24分です。おおむね毎時1本ですが70分前後あく時間帯があります。
- 12:50
窯元散策路を歩く移動
信楽駅前から続く古い路です。登り窯が残り、陶生町・焼屋町といった町名が今も使われています。
- 14:20
滋賀県立陶芸の森を見る移動
平成2年(1990年)6月の開設で、陶芸館・産業展示館・創作研修館・広場の4エリアです。星の広場は標高300mです。
- 16:10
信楽駅から戻る移動
帰りの1本を外すと次が遠くなります。運休の告知は公式サイトではなくXで出ます。
- 時刻は目安です。列車やバスのダイヤは改正で変わるため、出発前に各社の時刻表でお確かめください。
約400万年前の湖が、この丘に地層を置いた
地面の話から入ります。
この土地の基盤は花崗岩です。約7000万年前、中生代白亜紀にできたマグマが冷え固まったもので、 風化によって長石がカオリナイトなどの粘土鉱物に変わりました(甲賀市教育委員会)。
その上に湖が来ます。 古琵琶湖は約400万年前に三重県の上野盆地で誕生し、上野層・阿山層・甲賀層・約200万年前の蒲生層と堆積盆地を移しながら、現在の琵琶湖になりました。
湖は同じ場所に留まらず、北へ移動しながら地層を置いていきました。 その地層が古琵琶湖層群で、南北約50kmにわたって分布します。
信楽山地(信楽高原)は標高約400〜700mで、中央に標高300mほどの信楽盆地があります。 上野層の陶土層の上には信楽礫層が乗っていて、これが蓋になって陶土が削られて無くなるのを防ぎました(甲賀市教育委員会)。
つまり、使える土が残ったのは偶然ではありません。上に礫が乗っていたからです。
谷が樹枝状に分かれているから、どれも同じ地形に見える
同じ地層は、別のものも作っています。
甲賀と伊賀はどちらも太古の琵琶湖が形成した古琵琶湖層からなる丘陵地で、樹枝状に侵食された谷地形が広がります。 丘陵の先端や谷の入り口には、必ずといっていいほど城館が構えられました(甲賀市公式)。
ここが効きます。 複雑な地形はどれもが同じようで、攻める者を混乱させました。一方で京都や奈良にも近い要地なので、情報は入りやすい場所でした。
守りやすくて情報が集まる地形が、そのまま甲賀衆の里になりました。
甲賀忍者が世に知られるきっかけは、長享元年(1487年)の鈎の陣です。 日本遺産「忍びの里 伊賀・甲賀」では、令和元年度に佐治城跡と甲賀流忍術屋敷、令和2年度に甲賀百人組ゆかりの5か寺が構成文化財に追加認定されました。
忍術屋敷は元禄年間の民家に仕掛けを入れたもの
甲賀流忍術屋敷は、甲賀望月氏本家の旧邸です。 建てられたのは江戸時代の元禄年間(1688〜1704年)で、所在地は甲賀市甲南町竜法師です(甲賀流忍術屋敷公式)。
見るのは建物の断面です。中二階から、さらに三階に通じる構造になっています。
仕掛けは逃げる側の設備です。 隠し梯子、三階から一階へ下りる縄梯子、どんでん返し、格子の一本が外れる見張り窓。 落とし穴の深さはおよそ3メートルで、屋敷全体の地下に通路として広く掘られています。
仕掛けは見せるために作られたのではなく、出ていくために作られています。 入口ではなく出口を数えると、この家の設計が読めます。
望月氏の家紋「九曜星」の由来は、平安時代初期の貞観7年(865年)に遡るとされます。
信楽焼は約1250℃で焼く
焼物の側に移ります。
信楽で採掘される土は4種類です。蛙目粘土、木節粘土、実土、黄瀬土。 信楽焼はおよそ1250℃で焼きます(甲賀市教育委員会)。
4種類ある理由は配合です。 実土は粘りと腰が少なく鉄分が多いため、単独では使いません。より高温が必要な木節粘土に混ぜて、吸水率を下げます。
使える土が4つあるのではなく、混ぜて初めて使える土が4つあります。
黄瀬土は江戸時代(17世紀)以降、京焼の原料にも使われました。 明治5年(1872年)に作成され滋賀県庁と政府に提出された調査報告書には、「二本丸・夏南保」の2か所から出る白い土を用いることが記されています。
鉱山はいまも動いています。 雲井鉱山(黄瀬)は東西約500m・南北約200m・標高差約40mの露天で、ベンチカット法により採掘し、原鉱を径15mm以下に粉砕します。 大福鉱山は約300m四方、神山の日産信楽長石鉱山は約500m四方です。 長石山は信楽町の神山・上朝宮・中野・畑・黄瀬と連なって湖南市三雲まで点在し、滋賀県のアプライトは近畿地方有数の出荷量です。
同じ山の土で、湯呑みと大狸の両方が作れる
信楽の土は、処理の順番で性格が変わります。
乾燥させてから粉砕すると腰が強くなります。角張った砂粒が骨材として変形を防ぐので、タヌキの置物のような大物が作れます。
水と混ぜてから粉砕すると、丸みを帯びた細かい粒子が多くなります。 滑りとのびがよくなるので、ロクロで食器や煎茶器などの小物に向きます(甲賀市教育委員会)。
粉砕を乾いた状態でやるか濡れた状態でやるかだけで、作れる物の大きさが変わります。
窯元の店先で湯呑みと大狸が並んでいるのは、品揃えの話ではありません。同じ山の土を2通りに処理した結果です。
窯元散策路は、町名が仕事の名前になっている
歩く場所は信楽駅前から続く古い路です。
窯元散策路には登り窯が残り、無造作に積まれた古い火鉢が置かれ、「陶生町」「焼屋町」といった町名が残っています(信楽町観光協会)。
町の名前が、そこでやっていた仕事の名前になっています。
登り窯は数日間連続で焚き続けるもので、現在でもいくつかの窯が実際に使用されています。 煙が上がっているかどうかは運なので、見られたら当たりです。
信楽町観光協会のサイトの窯元リストには、45軒以上の窯元が掲載されています(2026年10月時点)。
歴史の長さは命名の側にも残っています。 日本六古窯(越前・瀬戸・常滑・信楽・丹波・備前)は昭和23年(1948年)ごろに古陶磁研究家の小山冨士夫が命名し、 平成29年(2017年)に日本遺産「旅する、千年、六古窯」(認定ストーリー#050、5県)に認定されました。 信楽の焼物づくりは中世の13世紀ごろから続いています。
1250℃の町に、1990年の公立施設が建っている
信楽焼は現役の産業なので、公立の施設も焼物向けに作られています。
滋賀県立陶芸の森は平成2年(1990年)6月に竣工・開設しました。 陶芸館(陶芸美術館)、信楽産業展示館、創作研修館(アーティスト・イン・レジデンス)、広場の4エリアからなり、星の広場は標高300メートルです(滋賀県立陶芸の森公式)。
創作研修館があるので、作る人が滞在します。 展示を見る施設ではなく、材料の産地に作家を呼ぶ施設という組み立てです。
産地に美術館を建てたのではなく、産地に滞在の場所を足したという順番です。
信楽盆地の北部には紫香楽宮の関連遺跡もあります。 天平14年(742年)に恭仁宮の離宮として造営が始まり、大仏を造立するための甲賀寺が造られ、天平17年(745年)には実質的な首都とされました。 昭和59年(1984年)からの40回以上の発掘調査で遺構が見つかり、平成12年(2000年)に宮町地区で大規模な宮殿建物跡が確認されています。 関連遺跡は9ヵ所で、東西約2km・南北約3kmに分布します(甲賀市公式)。
標高400〜700mの山地が茶を育てた
同じ地層の上に、もう1つの産物があります。
甲賀の茶の主要な産地は、信楽の朝宮と土山です。 朝宮茶は日本五大銘茶に数えられ、約1,200年前に最澄が中国より茶の実を持ち帰り、岩谷山(仙禅寺)に植えたのが起源とされます(信楽町観光協会)。
育つ条件は標高です。朝宮があるのは標高約400〜700mの信楽山地で、高原の気候が茶に向きました。
そして器につながります。 中世後期の室町時代、甲賀の茶を荘園領主に進上する中で信楽茶壺が生まれました。 江戸中期以降に流行する煎茶に合わせて信楽焼の煎茶器が作られ、明治以降は駅弁とともに茶を入れて売られた汽車土瓶が焼かれました(甲賀市教育委員会)。
茶を入れる器が、茶を育てる山と同じ土から焼かれています。
昼に茶を飲む場所を1軒入れておくと、午後に見る器の意味が変わります。
本数と、休みの曜日と、車の前提
実務の注意です。
- 信楽高原鐵道は貴生川〜信楽の14.7km・6駅です。所要は公式時刻表で23〜24分、おおむね毎時1本ですが、70分前後あく時間帯があります。 帰りの1本を外すと、次がかなり遠くなります。
- 運休の告知は公式サイトではなくX(@SHIGARAKI_St)です。 この路線は平成25年9月16日の台風18号で杣川橋梁が流失して止まり、平成26年11月29日に再開しています。災害時は運行情報を先に見てください
- 車なら新名神が前提です。平成19年度の開通で、市内に甲賀土山IC・甲南IC・信楽ICの3つがあります。信楽の町へは信楽ICから約10分です
- 甲賀流忍術屋敷はJR草津線の甲南駅から約2km(徒歩約20分、タクシー約5分)、新名神の甲南ICからは約3分です
- 紫香楽宮跡駅には無料のパークアンドライドが約100台分あります。信楽ICから近いので、車を置いて鉄道に乗る使い方ができます
- 甲賀市のコミュニティバスは地区別です。信楽地区には田代・畑・陶芸の森巡回線があり、MIHOのある田代としだれ桜の畑、陶芸の森を結びます。 「デマンド」「コミタク」は予約制です
- 忍術屋敷の水曜・第4木曜、陶芸の森の月曜、伝統産業会館の木曜が重なると見る場所が減ります。曜日から決めるほうが早いです
土産は、たぬきの置物と鮒寿し
持ち帰るものは2系統です。
1つは信楽焼のたぬきです。 「信楽=たぬき」のイメージは昭和26年(1951年)の昭和天皇行幸がきっかけでした。 地元が日の丸を持たせた大きな信楽たぬきで出迎え、天皇が歌を詠まれたことが全国に報道されて定着しました。 観光協会は11月8日を「信楽たぬきの日」として日本記念日協会に登録しています(信楽町観光協会)。
置物が焼けるのは、乾燥させてから粉砕した土を使うからです。 角張った砂粒が骨材になって、大きな形が崩れません。 7号くらいの大きさなら棚に乗ります。縁起物なので、箱のまま配ることもできます。
もう1つは鮒寿しです。 古琵琶湖は堆積盆地を移しながら、いまの琵琶湖になりました。 地層から出た土で器を焼いた土地の隣に、その湖があります。鮒寿しは、びわ湖産のニゴロブナを漬けた馴れずしです。
形が2つあります。お試しパックは少量から試せるもので、子持ちのものは卵の分だけ量があります。 スライス済みのものを選べば切り分けずに出せます。匂いが強いので、車に積むなら包装を確かめてください。
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泊まると、美術館の開館直後が手に入る
この1日で落ちるのはMIHO MUSEUMです。
信楽駅発の路線バスが令和6年3月末で廃止されたので、公共交通ではJR石山駅から帝産バスで約50分、しかも美術館の開館日のみの運行です。 入館の締め切りは16時で、レセプション棟から美術館棟までは約500m・徒歩7〜8分、北展示室と南展示室の観覧目安は各30分〜1時間半です。
京阪神から日帰りで入ると、到着が昼過ぎになります。観覧だけで半日の施設なので、時間が足りません。
信楽に泊まれば、信楽ICから約15分です。開館直後の空いた館に入れます。
宿は性格で3つに分かれます。 土山の大河原と甲南には温泉の宿があり、信楽の山側にも小さな宿があります。 水口は国道1号沿いにホテルが集まるので、帰りの足を優先する組み方に向きます。
車で動く土地なので、宿の位置と翌朝の行き先を先に合わせてください。

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服装と持ち物
- 窯元散策路は坂と細い路です。歩けるきれいめスニーカーで
- 忍術屋敷は中二階から三階へ上がります。段が急で天井も低いので、動きやすい服装で
- 平野部の年平均気温は14℃、東部と西部の山岳地帯は12〜13℃です。羽織りものを1枚
- 年間降雨量は1,500〜1,600mmです。畳める雨具を入れておいてください
- 冬は積雪があります。平野部で最高20cm前後、東部の山間部では30cm以上です
- 器を買うなら、緩衝材と手提げを1つ持っていくと持ち帰りが楽です
