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旅行
たつの・室津日帰りモデルコース|波が立たない海が、塩と醤油を運んだ
公開: 2026-10-24 | #たつの #龍野 #日帰り #観光 #関西
たつの市は兵庫県の南西部、播磨灘に面しています。 面積は210.87km²で、東西15.7km・南北29.8km。南北に細長い市です。
城下町の最寄りはJR姫新線の本竜野駅で、姫路から約25分です。 大阪からは電車で約2時間かかります。
隣の姫路が城の町なら、こちらは醸造の町です。 国の重要伝統的建造物群保存地区としての種別も「商家町・醸造町」になっています。
そしてその醸造は、波が立たない海から始まっています。
行く前に決まってしまうこと
室津と新舞子には鉄道が通っていません。 市公式の案内は「御津方面へは山陽電鉄の網干駅で下車、車で約20分」です。 車かタクシーか、市のコミュニティバスが前提になります。
そのコミュニティバスは月曜から土曜の運行で、日曜・祝日と年末年始は走りません。 本数も細く、観光協会のモデルコースでも新舞子に着くのは夕方の便です。
城下町と室津の見学施設は、週のうち同じ曜日にまとめて休みます。 道の駅だけ休みの曜日が別です。 1日で全部に入るつもりなら、曜日を先に確かめてください。
醤油の工場見学は2025年10月1日に再開しましたが、完全予約制です。 平日のみで、午前と午後に各1回、所要約60分、1回10名まで。 希望日の1週間前までに電話が要ります。 屋外を歩き階段があるので、車いすとベビーカーでは通れません。
手延そうめんの製造は例年10月から4月です。 夏に行っても、麺を干している季節ではありません。
新舞子の潮干狩りは2026年が4月18日から6月28日でした。期間は年ごとに決まります。 期間中も週に1日は休園し、ゴールデンウィークだけ例外になります。 干潟が出るかどうかは潮次第で、運営者自身が兵庫県立農林水産技術総合センターの潮見表を案内しています。
龍野公園の観光売店は休業中です。 そうめんを食べる場所として長く案内されてきた店なので、当て込むと外します。
1日の流れ
- 09:00
本竜野駅から城下町へ移動
姫路からJR姫新線で約25分です。城下町の最寄りはこの駅で、醤油蔵のある一帯まで歩けます。
- 09:30
うすくち龍野醤油資料館に入る移動
1932年(昭和7年)建設の元本社社屋がそのまま資料館です。県重要有形民俗文化財の醸造用具など約2,400点で、館内映像は約15分。
- 10:30
重伝建の町並みを歩く
面積約15.9haが「商家町・醸造町」として重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。市は区域を8地区に分けて説明しています。
- 11:30
龍野城と武家屋敷資料館移動
城の現在の建物は明治の破却後の再構成で、忠実な再現ではないと市観光協会が明記しています。武家屋敷資料館は1837年(天保8年)に鉄砲師が建てた町家です。
- 12:30
醤油の郷 大正ロマン館でひと休み移動
大正13年(1924年)建設の旧龍野醤油同業組合事務所です。同じ敷地の旧醸造工場は大正4年(1915年)の建物で、どちらも国の登録有形文化財。
- 13:30
室津港へ下る移動
市域は南北29.8km。御津方面に鉄道は通らず、網干駅から車で約20分が市公式の案内です。
- 14:30
室津海駅館と室津民俗館
現存する廻船問屋の建物は元豪商「嶋屋」の海駅館1棟だけです。民俗館は元豪商「魚屋」の脇本陣で、部屋23室・畳168枚。
- 16:00
賀茂神社の岬から新舞子浜へ移動
賀茂神社は建造物8棟が国の重要文化財で、境内のソテツは日本最北端の野生群です。新舞子浜は遠浅の干潟で、朝夕にカメラマンが訪れます。
- 時刻は目安です。列車やバスのダイヤは改正で変わるため、出発前に各社の時刻表でお確かめください。
波が立たない海が、塩と醤油をつないだ
起点は海の形です。 播磨灘は島と岬で閉じた内海で、波が立ちません。
だから室津は泊地になりました。 三方を山に囲まれた入江で、「室の内のよう」というところから「室の泊」です。
同じ波の立たない海が、新舞子に遠浅の干潟を作りました。市観光協会は近畿随一と書いています。 そしてこの内海の航路が、赤穂の塩を運びました。
塩が揖保川の水と出会って、淡口醤油と手延そうめんになります。
1つの海の性質から、港と塩と醸造が同時に出ている。 この1日は、北の城下町から南の港へ、その順にたどる形に組んであります。
15.9haが「商家町・醸造町」で選ばれている
数字で押さえます。 龍野の町並みは令和元年12月23日に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。
面積は約15.9ha。 全国130地区(43道府県107市町村)のうち兵庫県は6地区で、龍野がその最後の選定です。
範囲は龍野町大手の全域と、門の外・上川原・旭町・水神町・下川原・立町・本町・川原町・上霞城の各一部。 市はこの区域を8地区に分けて説明しています。
選定の前から守られていました。 平成2年度から、兵庫県景観の形成等に関する条例に基づく歴史的景観形成地区でした。
選定基準は「伝統的建造物群が全体として意匠的に優秀なもの」です。 1軒ではなく、並び方が評価されているということです。
軒高と瓦と窓で、町家の年代が読める
歩きながら見分けられます。 地区に残る築50年超の伝統工法の建物のうち、町家が約80%です。 18世紀中頃から昭和初期までの約250年分が、途切れずに並んでいます。
年代の手がかりは3つあります。
- 虫籠窓は18世紀のもので、地区内で最古の形式
- 桟瓦が登場するのは明治初期。それ以前は本瓦
- 軒高4.5m以上の本2階建が増えるのは明治中期以降
金属製の出格子は、古いものが安政4年(1857年)の町家に残っています。
区画も残っています。 寛政10年(1798年)の「龍野惣絵図」と現在の基本地形図を比べると、 龍野五町では53%超の宅地が寛政期の間口幅を保っています。
一方、旧武家地は約72%の宅地が分筆され、寛政期と一致する宅地は19%未満です。 町人地と武家地で、町の粒の大きさが違う。歩くと足で分かります。
龍野五町は上川原・下川原・横町(現在の大手)・立町・下町(現在の本町)で、 寛永7年(1630年)の町地子算用帳に五町の地子分担と各町の年寄名が載っています。 江戸の初めには、もう五町が成立していました。
淡口醤油は、原料の4つが全部近所にあった
なぜここで醤油なのか。 市と醸造元が挙げる理由は、原料の揃い方です。
- 播磨平野の小麦と米
- 山裾の大豆
- 赤穂の塩
- 揖保川の伏流水
この伏流水が鉄分の少ない軟水で、「播磨の名水」と呼ばれます。 鉄分が少ないと色が濃くなりません。だから淡い色に仕上がります。
濃口を水で薄めても代用になりません。味も香りも麹菌も別物です。
ここで海に戻ります。 4つのうち塩だけが、よその土地のものです。 赤穂の塩は、波が立たない内海の航路で運ばれてきました。
醸造が始まった年は書きません。 市の重伝建の解説と醸造元の沿革で記述が食い違っていて、どちらかに寄せられないからです。
資料館と組合事務所は、建物そのものが文化財
城下町で入る2館は、どちらも醤油産業の建物です。
うすくち龍野醤油資料館は、1932年(昭和7年)建設の元本社社屋をそのまま使っています。 2008年(平成20年)に国の登録有形文化財になりました。
展示品は兵庫県重要有形民俗文化財の醤油醸造用具など約2,400点で、館内の映像は約15分です。 本竜野駅から徒歩約20分の場所にあります。
醤油の郷 大正ロマン館は、大正13年(1924年)建設の旧龍野醤油同業組合事務所です。 同じ敷地の旧醸造工場は大正4年(1915年)の建物で、どちらも国の登録有形文化財です。 隣のクラテラスがたつの産品の売り場になっています。
組合の事務所が建つほど、醸造元の数が多かったということです。 1880年に龍野醤油醸造組合が結成され、1902年に組合証票が定められています。
そうめんも、同じ水と同じ塩から出ている
醤油と素麺が同じ土地の産物なのは、偶然ではありません。
手延そうめん「揖保乃糸」は2024年8月27日に地理的表示(GI)の第154号として登録されました。 登録理由書には、産地の条件がそのまま書き込まれています。 揖保川流域の肥沃な土壌、水車製粉の盛んだったこと、近隣の良質な赤穂塩。
醤油の原料表と、ほとんど同じ顔ぶれです。
歴史は古く、揖保郡太子町の斑鳩寺に伝わる寺院日記の応永25年(1418年)9月15日条に 「サウメン」が出てきます。 産業として本格化したのは安永頃(1771年から1780年)で、龍野藩の許可業種でした。 文化年間(1804年から1818年)に産地化しています。
江戸期には龍野藩・林田藩・新宮藩のそうめん屋仲間が品質の申合文書を交わし、違約金は2両でした。
ただし、揖保乃糸資料館「そうめんの里」は城下町にありません。 神岡町奥村で、最寄りはJR姫新線の東觜崎駅から徒歩15分。 総敷地19,605m²、駐車場は大型バス12台と普通車70台という規模です。 城下町歩きとは別の行程になるので、1日に両方は入れていません。
室津は「室の内」から名が付いた泊地
午後は南へ下ります。
室津港は天平の頃に行基が開いた摂播五泊の一つです。 三方を山に囲まれた入江で波が静かで、「室の内のよう」から「室の泊」と呼ばれました。 地形がそのまま港の名前になっています。
記録も古いです。 1180年に高倉上皇と平清盛が厳島詣での途中に立ち寄り、 「高倉院厳島御幸記」に賀茂神社の古びた社殿が5、6棟あると書かれています。
その賀茂神社は、いま建造物8棟が国の重要文化財です。 表門は四脚門で、龍の足が馬のひづめになった「馬足の龍」が付いています。 境内のソテツは日本最北端の野生群で、県の天然記念物です。
神社が立つ岬は、北前船の乗組員から「日和山」と呼ばれました。 出港前に天気を見る場所で、航路と港を知らせる燈籠堂が灯台の役目をしていました。 シーボルトは参籠所から見た播磨灘を、日本で見た最も美しい景色の一つだと書いています。
船乗りの実務の場所と、絶景の場所が同じ岬だったということです。 なお、シーボルトが絶賛した多宝塔は明治の神仏分離で破却され、現存しません。
弱点もありました。 波のない入江は、真水が足りませんでした。 港が船で一杯のときは、水を詰めた樽を載せた船が西隣の大浦湾に停泊し、陸路で水を運んだと市観光協会が書いています。
本陣6軒と、1棟だけ残った廻船問屋
17世紀末から、室津は参勤交代の上陸・乗船地になりました。
享保元年(1716年)の時点で、大名が泊まる本陣が6軒並んでいます。 紀伊国屋源三兵衛・薩摩屋孫九郎・筑前屋彦太夫・肥前屋四郎兵衛・肥後屋左太夫・一津屋三弥左衛門。
このうち薩摩屋は島津・毛利・牧野・内藤・有馬・大村の本陣を勤め、 薩摩藩の干鰯一手問屋であり、延岡藩から廻船82艘の取引先に指定されていました。 繁栄ぶりは「室津千軒」と呼ばれます。
買積の廻船問屋としても北へ通っていました。 行きは塩・酒・木綿・古着・大豆や雑穀を積み、帰りはニシン粕や昆布を積む。 松前・江差まで航行して、往復2度の利益を上げています。
その町並みは令和元年(2019年)5月に、文化庁の日本遺産 「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間―北前船寄港地・船主集落―」に認定されています。
ところが、現存する廻船問屋の建物は1棟だけです。 元豪商「嶋屋」の室津海駅館で、当時は許されなかった2階建です。
隣の室津民俗館は元豪商「魚屋」の脇本陣で、部屋23室・畳168枚。 2階が武家の宿泊所で、床の間も2階にあります。武家と町人で出入り口が別です。
明治に参勤交代が廃され、動力船が普及し、他の港が改良されると、室津は急速に衰えました。 1棟しか残らなかった理由はそこにあります。
龍野と室津は、同じ市でも南北に離れている
実務の注意です。
最大の罠は駅名です。 JR山陽本線の「竜野」駅は城下町ではなく揖保川町黍田にあり、市公式も「竜野駅から車で10分」と書いています。 こちらで降りてしまうと歩けません。城下町の最寄りは姫新線の「本竜野」です。
その竜野駅の駅舎は明治39年(1906年)建築で、改札口中央の木造の柱や構造材、屋根が当時のまま使われています。 約115年使われている寄棟造りの瓦葺きで、信号取扱所跡の「出窓」も残ります。
本竜野駅と播磨新宮駅は令和7年(2025年)10月1日から駅係員が不在になりました。 本竜野駅は自動券売機と「みどりの券売機プラス」だけなので、窓口の用事は先に済ませてください。
竜野駅前はロータリーの整備中で、コミュニティバスの停留所が駅の南側、 タクシー乗り場が駅の北ロータリーに移っています(2026年4月1日時点)。
車の場合、高速は山陽自動車道の龍野ICが最寄りですが、ETC専用料金所です。
重伝建の中は町家が間口いっぱいに建つ狭い道筋です。 武家屋敷資料館の前の道は一方通行で、車で入ると詰みます。 散策の起点として市のモデルコースが案内しているのは、龍野公園の駐車場です。
その武家屋敷資料館は、1837年(天保8年)に鉄砲師の芝辻平左衛門が建てた木造2階建です。 特別な展示はしていません。建物自体が展示物で、龍野ふるさとガイドが管理しています。
龍野と御津は同じ市でも離れています。 市の観光振興課のモデルコースは、龍野を午前に出て室津に午後着く配分で、移動手段は車と徒歩です。 公共交通だけで両方を回るつもりなら、曜日と便を先に組んでください。
持ち帰るのは、等級の付いたそうめん
出てくるのは手延そうめん「揖保乃糸」です。
箱は等級で分かれます。特級には黒帯が付き、その下に上級が並びます。
等級が付くのには理由があります。 明治27年(1894年)に、産地が統一基準の検査と等級分けを導入し、 名称を揖保川にちなんで「揖保乃糸」に統一しました。 箱に付いた帯は、明治に作られた物差しの続きです。
「新物」と書いてあるものは、その年に出荷するそうめんです。 専用の倉庫でもう1年寝かせたものは「ひね」と呼ばれ、別の扱いになります。 買うときに見分けられる区分です。
兵庫県産のほたるいかを煮た缶詰もあります。 醤油味と味噌味の2種類で、常温のまま持ち帰れます。
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泊まると、夕方の浜と翌朝の干潟が付いてくる
このコースを泊まりにする意味は、新舞子の時間帯です。
市観光協会が新舞子浜の見どころとして挙げるのは「朝夕の干潟は多くのカメラマンも訪れる」。 朝と夕の両方が要るという書き方です。
日帰りだと、日が落ちる前に撤収するか、夕景を取って帰る足を失うかの二択になります。 鉄道が通っておらず、市のコミュニティバスは日曜・祝日が運休だからです。
たつの市の宿は、城下町の龍野町と、海側の御津町に分かれます。 評価が集まっているのは海側で、新舞子の浜に面した宿と、室津の港の前の宿があります。 浜の前に入れば、夕景と翌朝の干潟が同じ足でつながります。

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- 工場見学に入るなら、屋外と階段があります。ベビーカーと車いすでは通れません
- 干潟に下りる季節なら、手を洗う水とタオル
