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旅行
二本松・岳温泉日帰りモデルコース|湯を8km引いてきた山を、城から見る
公開: 2026-10-23 | #二本松 #岳温泉 #日帰り #温泉 #東北
二本松市は福島県の中通り、阿武隈川の盆地にあります。
西に安達太良山が立ち、その山麓に岳温泉があります。
東北新幹線は二本松に停まりません。 郡山駅か福島駅で東北本線の普通列車に乗り換えます。
近くの飯坂温泉には、共同浴場が9つあります。 二本松は違います。湯も水も、山から引いてきた町です。
岳温泉の湯は8km、城の水は18km。 どちらも安達太良山という1つの活火山から下ろしています。
先に決めること|山の規制と、公園の季節
この土地は条件で見えるものが変わります。先に4つ押さえます。
1. あだたら山ロープウェイは季節で役割が変わります。 登山と紅葉のゴンドラとして動くのはグリーンシーズン(おおむね4月中旬〜10月末)です。 冬はスキー場としての運行に切り替わるので、山上散策の足としては使えません。
2. 沼ノ平の爆裂火口を望む行程は組めません。 1997年9月15日、沼ノ平の火口付近で硫化水素ガスにより登山者4名が死亡しました。 霧で道を失い、立入禁止区域に入った事故です。 以降沼ノ平コースとくろがね小屋〜鉄山コースは通行禁止が続いています。
3. 安達太良山は気象庁の常時観測火山です。 噴火警戒レベルで規制範囲が変わります。入山前に当日の規制を確認してください。
4. 霞ヶ城公園は、桜と菊で季節が真逆です。 桜の見頃は例年4月上旬〜下旬、菊人形は例年10月中旬〜11月下旬です。 日程は年ごとに決まるので、先に調べてください。 会期外に行っても菊はありません。
もう1つ。智恵子の生家と智恵子記念館は隣り合っていて同時に閉まります。 休館日があるので、訪問する曜日を先に決めてください。
1日の流れ
- 09:30
二本松駅に着く移動
東北新幹線は停まりません。郡山駅か福島駅で東北本線の普通列車に乗り換えます。2024年度の1日平均乗車人員は1,443人です。霞ヶ城・智恵子の生家・岳温泉の3か所を回るので、この1日は車が前提です(路線バス前提だと1日2か所が限度)。
- 10:00
霞ヶ城公園へ移動
二本松城跡です。2007年7月26日に国史跡となり、日本100名城の11番に選ばれています。車で行くなら駐車場があります。
- 10:40
箕輪門と本丸跡を歩く
1643年に丹羽光重が10万700石で入り、近世城郭になりました。入口の箕輪門は1982年の再建です。
- 11:40
日影の井戸と傘松を見る
応永年間(1400年頃)の井戸です。城の水は安達太良山から18km引いていました。傘松は樹齢300年です。
- 13:00
智恵子の生家へ移動
高村智恵子の生家は造り酒屋で、屋号は「米屋」、酒銘は「花霞」でした。明治初期の建物が現存し、隣に智恵子記念館が建ちます。
- 14:30
岳温泉へ移動
車なら智恵子の生家から直接向かえます。路線バスなら二本松駅へ戻り、福島交通の30-1・30-2に乗り換えます。本数は多くないので先に確かめてください。
- 15:30
温泉街で湯に入る
泉質は全国でも珍しい単純酸性泉で、源泉温度は68℃。源泉は安達太良山のくろがね小屋付近にあり、8km引いています。旅館16軒の温泉街です。
- 17:00
二本松駅へ戻って帰る移動
帰りのバスも便が限られます。乗る便を先に決めておいてください。
- 時刻は目安です。列車やバスのダイヤは改正で変わるため、出発前に各社の時刻表でお確かめください。
源泉は温泉街に無く、山の上にある
数字から入ります。
岳温泉の泉質は単純酸性泉で、全国でも珍しいものです。pHは2.4〜2.5。 源泉の温度は約55℃、湧出量は毎分1,290Lです。 温泉街の宿は旅館・ホテルが10軒、民宿・ペンションが6軒です。
ここで1つおかしな点があります。
温泉街に源泉がありません。
湯は安達太良山の鉄山の南直下、くろがね小屋付近から来ています。 その距離が8kmで、1本の引湯管を約40分かけて下ってきます。
8kmは、源泉の位置から出た距離
安達太良山は気象庁の常時観測火山で、本体の標高は1,700m。 連峰の最高峰は箕輪山の1,728mです。
源泉はその山の上にあり、温泉街には湧いていません。 湯が出る場所と、人が泊まる場所の距離が8kmです。
同じ山では1900年(明治33年)の噴火で沼ノ平に長径300m・短径150mの火口が生じ、 山上の硫黄採掘所が壊滅して多数の死者が出ています。
ただし引湯は噴火より前から行われています。 土石流のあとに温泉街を再建した時点で、すでに引湯は6kmありました。 噴火と引湯は、同じ山の別々の出来事として押さえてください。
温泉街は4回、場所を変えている
源泉の位置は変わらないまま、温泉街のほうが4度動いています。
9世紀(863年)の『日本三代実録』に出てくるのは「小結(こゆい)温泉」です。 名はのちに湯日・十文字・深堀・岳と変わります。
その湯日温泉は1824年の土石流で埋没します。 その後、二本松藩主の命で、前の温泉街より6kmほど下に 「十文字岳温泉」として再建されました。
次に1868年の戊辰戦争で焼失し、1870年に深堀へ移ります。 1903年の火災で全焼し、1906年に現在地で「岳温泉」として再建されました。
4期にわたって場所が変わっています。
動かした力は3つです。土石流・戦火・火災。 いまの引湯は8kmで、全国でも一、二を争う長さです。
いま歩ける温泉街は、1906年の再建以降の町です。 9世紀に史料へ出てくる湯なのに、町が現在地にある期間は120年ほど、ということになります。
国から保養地に指定され、国から独立を宣言した
同じ温泉街に、性格の違う2つの出来事が残っています。
ひとつは1955年の国民保養温泉地の指定です。 温泉法に基づく環境大臣の指定で、療養泉であることが条件になります。 このときの指定は全国7か所でした。
もうひとつは独立です。
井上ひさしの小説『吉里吉里人』(1981年)に触発され、 岳温泉は1982年4月28日に独立を宣言し、同年7月21日に「ニコニコ共和国」として開国しました。
そして2006年8月31日に日本へ再合併しています。24年続いた共和国です。
片方は国の制度、片方は温泉街が自分で始めたものです。
旅館・ホテル10軒の温泉街に、国の指定と、24年続いた共和国が並んでいる。 2つを1つの動機でまとめずに、並べて覚えるほうが正確です。
城も同じ山の端に築かれている
城へ移ります。
二本松城(霞ヶ城)は室町中期、1414年(応永21)頃に築かれました。 1643年に丹羽光重が10万700石で入り、近世城郭になります。 そして1868年に落城しました。
2007年7月26日に国史跡となり、日本100名城の11番(2006年選定)に選ばれています。 日本さくら名所100選、日本の歴史公園100選にも入っています。 入口に立つ箕輪門は1982年の再建です。
ここで見るのは水です。
城内には応永年間(1400年頃)の「日影の井戸」があり、 樹齢300年の傘松が残ります。
そして城の水は、約18km離れた山中の水源から引かれていました。 丹羽光重が造らせた二合田用水路です。
湯が8km、水が18km。 同じ山の別の高さから、別のものを下ろしていたということです。
城が立つのは、同じ安達太良山の支脈の端です。 山の端に城があり、その山から18km水を引いていた。位置と水路が重なっています。
少年隊62名のうち14名が戦死した
落城の日に起きたことです。
1868年7月29日の二本松の戦いで、 13〜17歳の少年62名から成る二本松少年隊が出陣しました。
隊を率いたのは22歳の砲術師範・木村銃太郎です。 守備兵力は約1,000人、少年隊からは14名が戦死しました。
数字を並べると構造が見えます。
攻めた側は7,000人、守った側は少年隊62名を含む約1,000人です。 その約1,000人のなかに、13歳が混ざっていました。 二本松藩には入隊年齢に2年加算する慣例があり、それで13歳が入っています。
戦いは正午を迎える前に終わり、城は焼けました。
箕輪門の外に少年隊の群像が立ちます。1996年のものです。 本丸の南西には1968年のレリーフがあり、木村が少年たちを教えた射撃場の跡です。 城跡の石垣より先に、この数字を見てください。
秋の霞ヶ城は菊人形になる
「二本松の菊人形」は霞ヶ城公園で秋に開かれます。 日本三大菊人形に数えられます。
会期は例年10月中旬から11月下旬です。日程は年ごとに決まります。
等身大の人形とジオラマを菊で仕立てる展示で、毎年テーマが決まります。 いまの菊まつりが始まったのは1955年です。
見どころは千輪咲で、1本の茎から約1,000輪を咲かせます。
同じ公園で、春は桜、秋は菊です。
桜は例年4月上旬〜下旬、菊人形は10月中旬〜11月下旬。 同じ場所なのに、見るものが季節で入れ替わります。
智恵子の生家は造り酒屋だった
高村光太郎の妻・智恵子は、二本松の造り酒屋の生まれです。
屋号は「米屋」、酒銘は「花霞」。 生家は明治初期の建物で、いまも現存しています。
隣に智恵子記念館が建ち、生家の2階には智恵子の部屋が復元されています。
智恵子は1938年(昭和13)10月5日に没しました。享年53です。 『智恵子抄』は1941年(昭和16)の刊行です。
ここで効くのは水です。
酒を造るには水が要ります。 安達太良山の伏流水と、阿武隈川沿いの盆地の寒暖差です。
湯・水・酒・詩が、1つの山から出ている。 この1日で見るのはそれです。
列車とバスの本数で1日が決まる
実務の注意です。
二本松駅は普通列車のみが停まります。 2024年度の1日平均乗車人員は1,443人です。郡山駅か福島駅で乗り換えてください。
駅前から岳温泉へは福島交通の路線バス(30-1・30-2)が出ています。 ロープウェイ山麓の奥岳方面へは路線バスと、季節運行の「二本松〜奥岳シャトルバス」があります。 いずれも本数は多くありません。先に時刻を確かめてください。
見どころは三方向に散ります。
- 霞ヶ城: 市街
- 岳温泉: 西の山麓
- 智恵子の生家: 油井地区
路線バス前提だと、1日に2か所が限度です。 車なら霞ヶ城公園に駐車場があります。 通常は300台規模で、菊人形の会期は400台まで増やす運用です。
山側へ寄るならくろがね小屋のトイレが使えません。 2023年4月1日から建て替えで休業中で、トイレと避難小屋の機能まで止まっています。 設備は奥岳で済ませる計画にしてください。
岳温泉は標高約600mの高原です。 温泉街の「桜坂」は、市内で桜の開花がいちばん遅い道です。 紅葉と初雪の時期は、山頂と温泉街で季節が1段ずれます。
土産は、現地で買う分と送る分を分ける
二本松には200年以上続く酒蔵が集まっています。市内の蔵元は4軒です。
大七酒造は1752年(宝暦2)創業で、生もと造りを続けています。
奥の松酒造は1716年(享保元)創業で、全国新酒鑑評会の金賞受賞蔵です。
蔵が残った理由は3つの重なりです。 安達太良山の伏流水、阿武隈川沿いの盆地の寒暖差、 そして城下町として藩が酒を抱え込んだことです。
もう1つは玉羊羹です。
ゴム風船に流した一口羊羹で、二本松が発祥です。 1937年(昭和12)、県知事と軍の依頼を受け、 日持ちする携帯保存食として開発されました。
作ったのは江戸後期から続く羊羹店で、全国菓子大博覧会の名誉総裁賞を受けています。
寒暖差のある内陸で保存食が必要だったことと、 城下町の菓子屋の技術が重なった産物です。
ここまでの2つ——二本松の蔵の瓶と玉羊羹——は、現地で買うものです。
下に並ぶのは福島の日本酒の飲み比べセットと、県内の桃を使ったゼリーで、 二本松の銘柄ではありません。 現地で重い瓶を1本買い、残りは帰ってから開けるぶんに回す、という分け方になります。
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泊まると、朝いちのゴンドラに乗れる
日帰りで取れないものが1つあります。山の朝です。
くろがね小屋は2023年4月1日から休業中です。 宿泊・日帰り入浴・トイレ・避難小屋の機能がすべて止まっています。
当初は2025年頃の完成予定でしたが、3年程度の遅れが見込まれ、再開時期は確定していません。
つまり山中に泊まる方法がありません。 朝の安達太良山に立ち会うには、麓の岳温泉に前泊する以外にないということです。
さらに紅葉の最盛期の土日祝は、ロープウェイの運行開始が繰り上がる年があります。 繰り上げの有無と開始の時刻は年ごとに決まるので、前日に確かめてください。 この早い枠は、泊まった人しか使えません。
宿は温泉街の旅館と、市街の駅前ホテルに分かれます。 温泉街の旅館は8km引いてきた酸性泉を使い、 源泉100%かけ流しを掲げる宿が並びます。
奥岳登山口は岳温泉から車で15分ほどです。朝に山へ上がるなら温泉街側です。

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- 本丸は市街と安達太良連峰を見渡す高台です。帽子と水を
- 山側へ寄るなら雨具。くろがね小屋のトイレは使えません
